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鹿児島県南九州市頴娃町石垣商店街。

海運が主流だった時代には大いに賑わい、最盛期には100を超える店舗が軒を連ねた古き良き港町。昨今では店舗は10軒以下にまで減少し寂れたものの、坂や路地を歩けばどことなく懐かしい雰囲気が残る。

NPO法人頴娃おこそ会は、この石垣商店街を中心に、2017年末現在で計7軒の空き家再生を手掛けてきた。これらの建物には「塩や、」「ふたつや、」など、接続詞の「や」と読点の「、」を語尾に持つ名称を付し、空き家再生が1軒で終わることなく次に繋がる物語とのメッセージを込めた。

おこそ会の活動は社会課題としての空き家再生を目的としてきた訳ではなかった。観光地づくりから始まったまちづくり活動が進展する中で、自然発生的に商店街での空き家再生活動にたどりついたことが特徴だ。不動産がもはや業として成り立たなくなった過疎のまちで、移住者を迎える上でやむを得ずNPOが家主と入居者の繋ぎ役を果たし、一軒一軒再生を手掛けてきた。結果的に、賃貸の空き物件が流通しない過疎地の空き家問題に対応するための家主交渉、契約、改修方法などのノーハウを習得してきたものだ。

まっとうな経済原理では立ちいかない過疎地の空き家の再生には、地域と連携した活動が不可欠だ。こうした対応に取り組んできた経験を、同じような課題に悩む多くの方々と共有することを通じ、何らかのヒントを提供出来れば嬉しい限りである。

本ページでは、再生空き家7軒について、紹介する。

 

「や、」がつなぐ物語 MESSAGE

ここから始まった

空き家再生の歩み

原田書店は石垣商店街の中心に位置する築140年の建物で、漆喰の壁が風情を醸し出す商店街のシンボルとも言える存在だった。石垣商店街活性化のプロジェクトが動き出し、私たちは商店街でまち歩きガイドを始めたが、その際必ずここを案内していた。だがこの物件が解体されるとの話が持ち上がったことから、私たちはいてもたってもいられず、家主と接触し保存活動に動いた。もっとも、当時満足な空き家再生の経験もないままに、熱く保存を訴えるばかりの私たちの対応は、家主を困惑させたのだと思う。一時は家主より無償譲渡との提案も受けたものの、そのための財源確保や受け手となるNPO側の合意形成などに苦戦し、満足な返答が出来なかった。結局家主が「責任」を取るかたちで解体の道を選び、地域のシンボルはあっという間に更地になってしまった。ここから得た教訓を次に活かすことで、私たちの空き家再生の歩みが始まることになる貴重な学びを得た物件であった。

CHALLENGE
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原田書店の解体は非常に残念な出来事だったが、これを引き継ぐかのように始まったのが、道路をはさんだ向かいに建つ築100年の物件の再生活動だった。解体に落胆しつつも、これで荷が重かったプロジェクトから逃れられると安堵感も覚えた私たち。そこに一度の挫折で諦めるなとのメッセージを込めて、アクションを起こしたおこそ会副理事長の石元宏二さんの姿があった。石元さんは大阪の家主のもとに飛び、交渉の結果、空き店舗を無償で借り受け、私たちにその活用をポンと委ねた。もっとも、空き家保存には動いたとはいえ、再生は初めての経験だった私たちにとって、その後の改修や活用に至る道は、平坦ではなかった。おこそ会メンバーや地域住民、行政、大学、高校など幅広い支援を得ながら、約2年を掛けたゆっくりとした改修作業を経て、地域の交流拠点として再生されるに至った。元塩販売店だったことから、塩や、と名付けられた。原田書店が古き石垣商店街のシンボルとすれば、新生・塩や、は新しい石垣商店街のシンボルとも言える存在となった。

再生空き家ファイル 1号物件

まちの交流拠点の誕生

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再生空き家ファイル 2号物件

移住者がやって来た!

さあ、どうしよう?

頴娃での観光まちづくり活動が活発になったことから、おこそ会が専任スタッフを迎えることになり、2015年、頴娃に福澤知香さんという20代女性のIターン移住者がやって来た。せっかくなので再生が進みつつあった塩や、での活動にも加わって欲しいとの願いから、石垣商店街周辺で家を探した。不動産業者に頼ることは出来ず、正直かなり苦労した。最終的になんとかおこそ会メンバーの仲介で借りることが出来たのが、塩や、から徒歩1分のこの物件だった。福澤さんは観光業界の経験があり、宿の経営に興味があった。このため民宿運営で実績のある長崎県小値賀島への研修にも参加してもらった。そこでの学びも活かし、移住からわずか1年足らずでここで民宿の開業に至り、自身の苗字から一字を取り「暮らしの宿・福のや、」と命名した。「観光客に出会わない宿。おとなりさんは地域のひと」を売りとしたユニークな宿として1年間で300人の来訪者を迎えるまでになった。ただし契約の事情で退去が決まっていたため、民宿はここから徒歩数分の※あずまや、へ移転し、新たなスタートを迎える予定だ。

※あずまや、・・・再生空き家7号物件にて詳しく解説

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石垣商店街から車で20分の大野岳は茶畑に囲まれた全国有数のお茶の産地だ。大野岳地区の茶農家メンバーとは、釜蓋朝市や観光マップづくりで協力する関係にあった。行政も大野岳での景観整備事業を手掛けるなど、観光と農業の連携が広がりをみせ、観光バスでの来訪者を茶畑に迎え、お茶を振る舞う観光プログラムの提供が始まった。その際に目を付けたのが、茶畑の中にポツンと建つ空き家で、ここを再生し観光対応の拠点として活用しようというプロジェクトが始動した。

活動の中心となって動いたのは近隣在住の茶農家メンバーだった。家主との協議や片付け、改装に関わる実務を担った。その後県内の第一工業大学や美術作家、頴娃高校機械電気科、おこそ会のメンバーや地域住民など多くの支援を通じて、着手から2年を経た2017年春にひとまずの改修を終え活用開始に至った。茶畑を眺めながらのんびり過ごすには適した物件で、「茶や、」と名付けた。観光対応や農や食をテーマにしたイベント活用などが始動している。今後、観光と農業の交流拠点としての定着に向けて、さまざまな展開を図っていきたい。

再生空き家ファイル 3号物件

茶農家と取り組んだ

観光と農業の交流拠点づくり

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おこそ会のまちづくり活動が活発になる中で、2016年末に前迫昇吾さんという20代の男性が石垣に移住することになり、住居が必要となったため目を付けたのが、塩や、の向かいにある空き家物件だった。家主は宮崎に住む女性で、空き家になってからも定期的にここに通い、空気の入れ替えや清掃を行うなどまめに管理をしていたことから、痛みはそうなかった。目の前の塩や、で展開する私たちの空き家再生活動を理解してくれたこともあり、トントン拍子で借り受けが決まったことは、とてもありがたかった。敷地内にこの母屋棟と離れ棟が2軒並んでいることから、ふたつや、と名付けた。母屋棟は大学生のワークショップで廃材を活用した壁をつくることでリビングスペースを切り分け、一旦は前迫さんのお試しハウスとして活用した。その後頴娃への来訪者が増えつつあったことや、商店街の中心にある地の利から、ゲストハウスとしての活用の可能性を見い出しリビングの拡張や水回り改修、DIYでの壁の漆喰塗りなど、さらなる改装を進めている。家主もこうした地域での活用を応援してくれており、2018年春の開業に向けて準備を進めて行く予定だ。

再生空き家ファイル 4号物件

ふたつや、母屋

お試しハウスからゲストハウスへ

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なごみや、

2017年初にさらにもうひとり、蔵元恵佑さんという20代男性が石垣に移住してくることになった。地域ネットワークを屈指して空き家を探したところ、塩や、から徒歩数分圏内に物件を見つけた。関係者を当たり、家主と繋がる人を見つけ、その方に打診するという手間が掛かるが信頼関係を重んじた手法でコンタクトしたところ、隣町に住む家主と連絡が取れ、現地でお会いすることになった。初対面の家主に借りたい意向を切り出したところ、二つ返事で快諾頂き、いとも簡単に借り受けることになったのは驚きだった。後で聞けば、ふたつや、の家主とは親戚同士で、私たちの活動についても理解して頂けていたことにも助けられたようだった。家主は東村和子さんというお名前だったので、和の文字をとって「なごみや、」と名付けた。車で20分ほどの隣町から定期的に通って管理をしてくれていたお蔭で状態は良く、水回りの補修を行った程度で、あとは使いながら少しずつ必要な補修を施していくこととした。和子さんからは、入居者の蔵元さんのもとへバレンタインのチョコレートが届いたり、ご主人の治男さんもおこそ会メンバーが行うDIY作業に顔を出してくれるなど、大変ありがたい関係を築くことが出来ている。

再生空き家ファイル 5号物件

家主さんとの関係構築

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ふたつや、離れは、同じ敷地内に建つ母屋との契約に付随したいわばおまけ的な物件だった。こじんまりとしたサイズの離れ棟は痛みも目立ったため当初は扱いに悩んだ。だが無償で使えるありがたい物件であることから、多少の不具合は受け入れる覚悟のやってみよう精神で、実験的な改修に踏み出した。まずはおこそ会メンバーを中心に家財道具を搬出し、さらにDIYで可能な解体作業を手掛けた。その後、母屋の改修も関わり気心が知れていた地元の平川工務店の平川大介さんに天井や床下などの大掛かりな作業を発注した。完了後は改めておこそ会メンバーが棚づくりや床や壁の塗装などの軽作業を実施した。ハーフビルドというよりは工務店作業とDIYを織り交ぜたハイブリッド型の施工だ。こうしてひとまずの改装を施した離れ棟は、おこそ会スタッフの事務所として使うことにした。自分たちの事務所のDIYを手掛けることで愛着も湧き、その後もゆるやかに改修が進行中だ。塩や、にも近い便利な立地であることから来訪者も多く、ここを通じて新たなプロジェクトやビジネスも生まれるなど、交流拠点として機能し始めている。

再生空き家ファイル 6号物件

ふたつや、離れ

諦めかけていた家を事務所へ

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あずまや、

なごみや、を借りることになった際に、家主から「もう一軒あるので見に行かないか?」と誘われ、徒歩数分の場所にある空き家に足を運んだ。ややこじんまりとした家で、古くはあったが幸い雨漏りはなく、手直しをすればまだ使えるとの印象だった。家主は解体を検討しているとのことだったが、ふたつや、離れと同様に改修実験を施すこととし、当面は無償で使わせて頂くことにて了解を頂いた。家主の苗字が東村さんであることから、あずまや、と名付けた。ここから数分の場所で民宿として営業していた福のや、が契約の都合で退去することになったため、このあずまや、を活用して一棟貸しの宿として運営してはどうかという話になり、宿としての改装を進めた。ここもふたつや、離れと同じく工務店発注とDIYを取り混ぜたハイブリッド型で改装を行い、DIYを行う際には改装ワークショップとして広く外部からの参加も募るなど、多くの人々の関わりによって作業を進めた。家主の東村ご夫妻もちょくちょく足を運び手伝ってくれたりで、私たちの活動を後押ししてくれることがありがたい。2018年春には福のや、を引き継ぐ宿として開業を迎える予定だ。

再生空き家ファイル 7号物件

解体予定の家を民宿に

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NPO法人頴娃おこそ会

空き家再生プロジェクトチーム

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